「軟彩」
軟彩は一般的には中国上絵付技法のひとつ 琺瑯質の絵具を使った粉彩や夾彩を言うが、それとは別に当倶楽部では高火度で焼成した後に低火度釉で彩りを添える技法を軟彩と呼んでいる。名付け親は
色絵磁器の人間国宝であった加藤土師萌先生(1900-1968)。先生の三男 故加藤徳弘先生に創立当初からご指導いただいてきた当倶楽部では、土師萌先生の技法を基に
夏恒例の「軟彩の会」を催している。
軟彩の釉は主に鉛を媒熔剤としているので、鮮やかな色調となる。釉を掛けずに1250℃で焼締焼成した上に 釉を部分的に筆置きし、コンプレッサーを使用し全体へ施釉。本焼焼成後で素地に吸水性がないため、事前に充分窯で熱しておく。施釉後は810℃で焼成。釉の組成もほぼ同じで色鮮やかさも似ている
一色一色きっちりと塗り分ける伝統的な上絵付技法とは違い、流れて色が混ざり合う流動性が魅力。
釉下の加飾については、ワインクーラー以外は信楽並土や信楽赤土で成形後、白化粧掻落しで文様を描いている。
大場さんの盛鉢は、軟彩の色合いが効果的な海の中の絵が楽しい。
落合さんの壺、藤牧さんの蓋物は掻落しの彫文様にイッチン盛を加えている。
岡本さんの八角陶匣は色化粧土を施した。
金沢さんの鉢カバーは素焼後、掻落し線の上に更に弁柄で色づけ、力強い表現になった。
ワインクーラーは信楽並土で成形後素焼。加飾はすべて素焼後に施した。まず白マット釉を施釉し、その上に弁柄や呉須で絵付。釉薬の上に描くことにより
筆がかすれたり、下描きができないため 線に即興的な勢いが出た。
高部さんはさらに白マット施釉前に撥水剤で紫陽花に降り注ぐ雨を描き、アクセントをつけた。
関さんの弁柄での松の文様は、掻落しによる線より強くしっかりしているが、釉が混ざり合い軟彩ならではの仕上がりになっている。
荒井つや子
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