創立50周年記念 日本陶芸倶楽部アマチュア作品展受賞作品一覧
陶芸部門 本年度審査員 中里 隆・竹内順一・小池頌子・前田正博
(敬称略)
高久眞佐子
「色の魔術師 Sonia Delaunay」
径28.0×43.0 高2.5cm
この色合い、普通はなかなかできないですね。素直に色をぶつけたその精神に感動した。
審査員一同
大好きなフランスの女流画家 ソニア・ドローネの絵のイメージをもとに制作しました。化粧や下絵顔料を駆使し、複雑な制作過程だったため、焼き上がるまでハラハラでした。窯から出た時、ひびも入らず、複雑な沢山の顔料も色も鮮やかに本当に美しく、飛び上がるほどに嬉しかったです。50周年の記念展でこの賞を頂け、また昔から親しくしている唐津の陶芸家 中里隆さんからお祝いの言葉を頂いた事も大切な思い出となりました。
高久眞佐子
國保有理
「祥瑞の器」
水指 径17.5 高 17.0cm
プロもジェラシーを感じる作品。ちょっと明るく新しい。祥瑞は中国が源流だが、この文様はありそうでない。祥瑞の精神を抜き取って、こう展開した工夫がすごい。
審査員一同
20代からやきものを始め、祥瑞には30歳位の時に出会いました。始めた頃から思い通りにならず20年位は何度も作るのをやめようと思いましたが、ある時から失敗して落ち込んでも作る事を楽しもうという気持ちに変わりました。長年やきもの作りを続けられたのはやはり好きだったからだと思います。やきものを愛し、楽しめて幸せを実感する日々の中、特に絵付けをしている時は至福の時間です。
國保有理
藤原規子
「飛鉋文小鉢5客」
径15.5 高 6.0cm 5客
技術的に難しい飛び鉋をいいバランスのセットにしている。作りも軽く、出来がいい。
審査員一同
この度は思いもよらず耳庵賞を戴き、驚きと嬉しさで胸が一杯です。作品は食卓に並べられるものをイメージして作ってきました。やっと電動ロクロが回せるようにはなったものの、飛び鉋に至っては鉢のカーブに沿った模様がなかなか出しにくく2種類の鉋を使いました。作陶全体を通して難しい局面では、今まで先生に教えて戴いたことを思い出しながら一つ一つ仕上げるように心掛けました。この作品で賞を戴いたことを一つの励みとしてまた次の作陶に取り組んで行きたいと思います。
藤原規子
宇田比呂美
「陶匣三種」
左 径6.0×6.0 高8.0cm
中 径7.5×5.0 高12.0cm
右 径5.0×5.0 高8.0cm
難しいハコものをロクロの丸でなく四角いものできちっと作っている。表面のデコボコや稜線もよく効いている。5つや7つにして、バリエーションの幅を広げてもいい。
審査員一同
この度は思いがけず谷川徹三賞を頂戴しましてありがとうございました。賞をいただけるなんて思ってもいなかったのでビックリしました。最近はお皿や器を作っても収納に困まっています。ふと小さなガラスの器を、古い雑誌の切り抜きの中にみつけ、それをヒントに作陶しました。用途不明物体ですが、これから何を入れるか考えます。
宇田比呂美
巖谷さゆり
「危ういバランス」
径40.0×18.0 高50.0cm
アートというと必ずしも美しい快いものだけではないが、これは快い楽しいアート。切れてきたり歪んだりのリスクが多いものをこれだけちゃんとやれたのはすごいと思う。
審査員一同
安定していることがあたりまえの花器や水差しのバランスを崩してみたいと始めた試みで、小型のものをいくつか作りましたが、最後に大きいものをと制作したのがこの作品です。危ういながらもちゃんと立っているのは、それなりにバランスがとれているのだと妙に納得した次第。本当は口のひとつを手で破りたかったのですが、土が硬くなりすぎてあきらめました。釉薬は大好きな釉研黒マットです。
巖谷さゆり
武田美樹
「breakfast time」
径20.0 高 2.5cm 6枚
6枚セットの発想もいい素直な作品。色の取り合わせがきれい。派手な黄色と静かな素地と、日本の食卓にもすごく合う。
審査員一同
キッチンペーパーを使った「和紙染」です。下絵の具を染み込ませた後、紙の切れ端がなかなか剥がせず苦労しましたが楽しい作業でした。デモで見せて頂くスムーズな工程とはまた違った展開でしたが、懲りずにこれからもいろいろな技法に挑戦していけたらと思います。
武田美樹
長山一夫
「“すしや”の湯呑みだァー!!」
径7.5~9.0 高10.0cm 6客
格好いいなと思った。作らせてもらいたいな、教えて。
中里隆
鮨屋の大きな茶碗です。たっぷりの土を丸く、少し長方形に切り取り、台の上に面を変えながら落としていきます。外観が面白い多面形になってきたら縦にし、外観を維持し、内側を少しずつ掘っていきます。数日かけ、掘っては乾かしの繰り返しの挙句、最後はぎりぎりの薄さにまで削っていきます。ここまで来ると快感です。素焼きに下絵の具で彩色、本焼き。不揃いな形と、行きあたりばったりの線と色合いが上手くマッチし、店でも面白がられると思います。
長山一夫
亀卦川健一
「織部秋六題」
径28.5×21.0 高2.0 cm 6枚
6枚揃いという発想がいい。そして大きく1つの膳にもなるのではないか。桃山の作例をよく勉強され、自分流に作った文様が素晴らしい。
竹内順一
織部の魅力は、のびのびと自由闊達に自分の想いを表現できることだと思います。秋に因んで、月夜に山を飛ぶ雁の群れ、小川を流れる紅葉、田舎家の庭先の山野草、七草の草籠、小菊の群生、軒先につるされた干し柿、日本の原風景のような景色をイメージしながら、織部模様をアレンジしてみました。食卓で家族銘々の前に置いたお皿の上に、八寸のようにオードブルを盛ったり、お肉やお魚を装ったりと使い道を考えながら作陶するのはとても楽しかったです。思いがけず、このような賞をいただき、とても励みになりました。
亀卦川健一
安西美津子
「赤い靴はいた女の子」
カップ 径9.5 高 9.0cm 4客
皿 径17.0×19.5 高1.5cm 4枚
土はもちろんのこと、釉薬(色)によってガラッと変わる面白さをこの頃しみじみ感じる。この器から、作者の人生と喜びを感じた。とても素敵だと思った。
小池頌子
横浜市歌を諳んじて歌える「浜っ子」です。赤い靴を履いた女の子は憧れでした。仕事と時代に恵まれ、ツアーで、会議で、添乗として、団員として、と、随分とあちこち行き風景だけではない、人間の風景を眺めました。現在の繁栄も争乱も人間の長い生活の営みがもたらした歴史の結果のような気がしています。憧れた女の子昔々から、母の背で、パートナーの足で、馬・牛・車・小舟・大舟に乗って「浜っ子」になっているようです。
安西美津子
中山茂
「Tomato」
径8.0 高 15.5cm
ウォーホルがポスター(作品)にしたキャンベルスープ缶をまた元に戻したというか…。その発想というかチャレンジ精神、またディテールの仕上げの良さに感服。
前田正博
この作品は、土とは違う素材の物を陶器で創ってみたいと考え、「キャンベルのスープ缶」を三次元の世界で表現したものです。忠実に再現することで作品を見ていただく方に驚きをと考え、レタリングや絵の具の発色も先生方にご教示いただきながら丁寧に仕上げました。現代のプルトップ型ではなく缶切りで開けたようにしたのも「缶」を意識していただくためです。これからも遊び心を大切に「大人の泥んこ遊び」を楽しみたいと思います。
中山 茂
日本画部門 本年度審査員 滝沢具幸・宮城 真
(敬称略)
武田茂子
「のどぐろ」
52.0×41.0cm
墨の滲み方が活かされていて、たっぷりとしたおおらかな表現となった。魚の目が生き生きとして新鮮さが出ている。
滝沢具幸
ご覧いただいた皆さまから「美味しそう!」という言葉をいただきました。この絵にとって最高の誉め言葉です。陶芸で、器にさらっと絵が描けるようになりたくて墨絵を始めました。それなのに、進歩が見られない日々、器に描けるのはいつの事だろうと思っていましたが、今年はそれにも挑戦でき喜んでおりました。そんなところにダメだと思っていた墨絵での受賞、これを糧に墨絵も俄然やる気になっています。
武田茂子
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