2017年7月26日
陶芸家ご紹介⑦
前田正博先生(MASAHIRO MAEDA)
陶芸の道に入り、一貫して 磁器の素地に色彩豊かな絵付を施した器を制作し、独自の境地を広げ、新しい色絵磁器の世界を切り拓いてこられた前田先生。
その華やかでありながら繊細、かつ重厚感のある作品はまた、優しくユーモアに満ちた前田先生の人柄をも感じられます。
先生には当倶楽部の数々のイベントで、折に触れ、お世話になっています。
前田先生からアマチュア陶芸家へのエール
私は、工芸の基本は「明るく、楽しく、美しく」だと思っています。
人それぞれ考え方は違うでしょうが、楽しんで、遊び心でつくった作品を使うこともできるやきものの世界。ものつくりの多様な喜びを、日々経験していってください。
1948年、京都府久美浜町生まれ。東京藝術大学で陶芸を学び同大学院工芸科陶芸専攻修了。現在、六本木に工房を構え、六本木磁器倶楽部を主宰。昨年、横浜馬車道に前田正博磁器研究所を開設。
日本工芸会常任理事 沖縄県立芸術大学非常勤講師 茨城県立笠間陶芸大学校顧問
子供の頃から美術が好きだった先生。東京藝大に入り、毎日が楽しく 朝から晩までずっと学校で制作し、2年生までに絵画や彫刻、工芸を一通りやった上で、進むごとに変化する工程が楽しく自身に向いていると思い陶芸を選んだそうです。
在学中は、伝統的な和絵具による花鳥風月や幾何学模様を一般的な余白を活かした意匠ではなく、全面に絵付をする独自の色絵磁器の表現をされていました。卒業後も同じ手法で作品を発表していましたが、キャンバスに絵を描くように色を塗り重ねたり引っ掻いたりしたいとの想いから、洋絵具を取り入れます。
洋絵具は幕末頃より導入された素材で、色数が豊富で薄くのばし色同士を重ねることができる等、和絵具にはない性質を持っています。
形を作ってから色と絵を考えるという先生の作品の特徴として、まずその形に注目したいところ。デザインも絵付も基本的にはぶっつけ本番。様々な本や展覧会で刺激を受けイメージが浮かぶとロクロで成形し、手作業で削り整え、作っていく工程でイメージを実際の形に近づけていくそうです。
素焼した器に透明釉を掛け本焼きし 白磁に仕上げ、赤、青、黄、緑、金、銀等を刷毛で打つように彩色し焼成を何度も繰り返すことで生まれる緻密で複雑な質感。鮮やかな色調を背景に、洒脱なふくろうやサボテン、ヤシの木が器を覆いつくします。
また近年では、極細のマスキングテープを活用したより幾何学的な模様の、塗を思わせるシックな作品も発表されています。全面を色絵に覆われた作品は、色彩の豊かさ故、磁器であることを忘れる程です。
先生の作るものは「用」を前提とした器が主ですが、「そこに在ることでその場の雰囲気を持たせられるもの」を目指しています。絵画的な表現を食器という立体の中に取り込んできたのもそのひとつの理由。奇を衒っただけの器ではなく、日常の使用と展示の楽しさの両方を兼ね備えています。
茶碗や水指等、茶道具も作り続けている先生。
30代半ばに、大寄せ茶会などで使われる数茶碗の注文を受けたのが初めての茶碗制作で、お茶のことは知らなかったのでプレッシャーは全くなかったそうです。その10年後、100碗展を開催し大好評を博します。「茶碗の大きさは、絵付もバランスもごまかしがきかないため、ぎちーっと詰めて完成度を上げなくてはならず、そこが面白い」そうです。
前田正博先生 展覧会情報
2018年 6月3日(日)~10日(日) 現代陶芸 寛土里
2017年秋、「創立50周年記念 日本陶芸倶楽部アマチュア作品展」の審査員を務めていただきます。