2019年12月12日
第36回 日本陶芸倶楽部アマチュア作品展受賞作品一覧
陶芸部門 本年度審査員 柳原睦夫・伊藤北斗・浦口雅行
(敬称略)
高久眞佐子
プロヴァンス
径24.5 高2.5 cm
造形的な作品、使い勝手のよさそうな作品…、いろいろな作品がある中でパッと目に入った。色合いが非常にきれい。彫ってある部分とか、模様の入れ方、全体の統一感が非常に優れていて、とても魅力的な作品となっている。
伊藤北斗
昔、私と娘がレンタカーでどんよりとした日のパリから南仏に向かって走っていた。ヴァンスにあるマチスのロザリオ礼拝堂見学を兼ねてのドライブで、着いた時の空気が澄んで抜けるような真っ青な空と キラキラと輝くトルコブルーの海を前にして、感動で声がでない。その時の雰囲気を思い出し、その懐かしい思いをお皿に出せたらと制作した。今 徐々に嬉しさがこみあげてきています。この勢いに乗って、次は仏像に初挑戦します。
高久眞佐子
許斐順子
睡蓮咲く池
径40.0 高6.5 cm
堂々とした大きさ、ロクロの技術、金・白金(プラチナ)彩を使いかなりきちっとした作品に仕上げている。これだけの仕事をされていて、説得力のある作品。
伊藤北斗
睡蓮を写生しに明治神宮内苑に出かけました。葉は池一面に広がり、ピンクや黄、色とりどりの花が咲きほこり水面に映えていました。いつかこの風景を皿に写したいと思っていました。この度、黒釉の大皿に金とプラチナの上絵付けで表現してみました。この手法は何度か手掛けているのですが、塗り絵のようになってしまい難しく、今回は濃淡をつける事により深みが出るのではと考えてやってみました。今後も手法を広げて挑戦していこうと思います。
許斐順子
塚田雅啓
清流を裂く者
径7.5×22.0 高19.5 cm
構図、デザイン、大変不思議な作品。非常に明確なメッセージを持っていて、力強い。若冲の絵にこういう真っ逆さまに向かう鳥があり、面白いと思って。ルーツはわからないが私の好み。
柳原睦夫
軟彩の講座の際、釉薬が流れる特性を効果的に活かせる絵柄の作品を作ろうと思いました。いろいろと考えた結果、縦の動きをする生き物としてカワセミにたどり着き、その陶板を作ることにしました。今年に入ってから堆朱や鎌倉彫などの浮彫に魅せられていることもあり、立体的な模様に彫り、蒲鉾形陶板にし、自立する作品に仕上げました。軟彩を2度焼き重ね、この濃さにまでなりました。
塚田雅啓
安西美津子
「浜っ子」
蓋物 径20.0×23.0 高9.5 cm
伝統的な織部の様式に、絵付けはモダンな風景。このちぐはぐが面白い。こういう発想はこれから皆さん取り入れるといいと思う。自分の好きなものを描くと気持ちが躍動する。やきものに描いてみるその気持ちが大切。
柳原睦夫
戦乱の終結と同時に織部が生まれたのではないか、かつての戦乱の地に鄙や山川草木に象徴される山里廊での茶の接待に使われたのではないか、と独断と偏見の織部への関心が、現代浜っ子をみなとみらいに向かわせた。観覧車を“摘み”にしたくて陶箱を作ったところ指導の先生にヨイショされ銘々皿まで作る破目となり、また観覧車に拘り、掲示時計に0638と誕生日まで入れてしまった。結果として米寿の記念制作になりました。
安西美津子
市川正人
弦楽四重奏
左 径24.0×7.5 厚4.0 cm
中右 径11.5×4.0 厚2.5 cm
陶芸の技法で、ここまで精緻な完成度の高いオブジェを作るのはとても大変なこと。チェロの前面の膨らみ等、とても細かい所まで作り込んでいる。これは本当に力作。素敵だと思う。
浦口雅行
友人が作ったバイオリン形の箸置きを見て閃めき、初めは形だけを忠実に作りましたが何か達成感が有りませんでした。そこで楽器店に行き偶然中古のバイオリンに目が止まり、3000円で購入。それからは何回も作り直しては失敗の連続。繊細な作業でネックヘッドの渦巻きを掘り出すのに2週間もかかってしまったり、上板の微妙な膨らみが乾燥で安定しなかったり、修正、修正の日々でした。かれこれ10個ほど作り、その中から選んで四重奏に仕上げました。制作の裏側を想像評価していただいて嬉しい限りです。これからも見る人と対話するような作品を作っていきたいと思います。
市川正人
細田和夫
野鳥の水飲み場(サイホン式)
径34.0 高37.0 cm
まず色とか造形が目を惹いた。中のボトルに水を入れると周りに水が一定に保たれ、野鳥も来て水を飲めるという仕掛けがあると知って、これは我々仕事でやっている者には思いつかない発想だと思った。これこそ本当に楽しんで作っているというアマチュア陶芸の真骨頂、心から楽しめるような素敵な作品。
浦口雅行
この度、とても光栄な賞をいただき、本当にうれしく思っています。自宅の庭には小鳥のエサ台があり、スズメなどの野鳥が飛来します。作品の題材に悩んでいた頃、その光景を思い出し野鳥の水飲み場を作ることにしました。効率的に水をやる方法として水筒を逆さ(サイホン式)にすること。そしてその美観を考え、水筒をサイロの中に収めるように計画しました。制作にあたっては、牧場にあるサイロの屋根形状と壁の石積みの表現に苦労しました。
細田和夫
谷中耀子
宇宙への飛翔
径33.0×40.0 高35.0 cm
これ位の大きさや形を作るにはそれなりのキャリアをお持ちのはず。絵付けの技術もしっかりとしている。また外は外、内は内で分けずに、外にも内にも装飾していて、内外わからないということは昨今の時代感覚の中にもあり、またそういうものが私の気持ちに添ってくれた気がする。
柳原睦夫
この度「宇宙への飛翔」で賞をいただき、皆様に感謝申し上げます。宇宙への憧れを抱き、遠く煌めく思いを馳せていたことが作品の構想です。銀河への旅、宇宙を自由に飛び廻りに…。これからも奇をてらうことなく、過去・現在・未来をつなぐモチーフを見い出して参ります。
谷中耀子
角田 甦
鳥色々
真中 径8.0 高17.5 cm
大変な力作。完成度といい、一つひとつの絵付けの構成、配置、連続模様の形の取り方、それらがとてもキチっとしていて、どうしても目に入ってくる。私も絵付けを主体にしている作家なので、この賞にふさわしいと思い選びました。
伊藤北斗
今回の受賞はまったくの予想外のことで、受賞の旨をお聞きした時にはホンマでっかとつい関西弁が出てしまいました。仕事も暇になり濡れ落ち葉になるのもまずいし、何かいい趣味でもと思っていた頃、以前から蒐集していました滝口和男先生の作品を見ながら、陶芸でもやってみようかなと思って始めたのが65歳の時。それから7年の月日が経ちました。今まで続けられたのはいろんな出会いがあったからだと思っています。陶芸のきっかけを作っていただいた滝口先生、丁寧に指導いただいた陶芸教室の先生、金液の存在を教えて頂いた植葉香澄先生、小野多美枝先生の作品など、多くの感動と刺激を頂きましたことに感謝しております。試行錯誤しながらの制作の日々ですが、三途の河を渡るまでの道草だと思って、今回の受賞を励みにこれからも楽しく続けていきたいと思っています。
角田 甦
中村直子
箱膳~おもてなしに~
猫箱 径24.5×34.0 高10.0 cm
本当にかわいい。作者の方の猫愛が伝わってくる。白・黒それぞれの中に入っている器も細部まで拘っていて、箸置きのポーズも猫好きにはたまらない。素敵な、気持ちのこもった、ほわっと心を温かくする作品。
浦口雅行
今回は日本古来の食器入れの「箱膳」にヒントを得て作りました。白黒それぞれの猫の箱に、皿やカップや蓋物、ゴブレット、箸置きなどが収納されていて、蓋をお膳のように使います。私の場合は箱膳ならぬネコ膳となりました。昨今、世の中は猫グッズ流行りで、その中で、どこかで見たことのある物でなく、誰の真似でもない私らしい猫を作ることに腐心しました。どの子もこの子もかわいい、と思いながら作った作品が、審査員の大の猫派の浦口雅行先生に「かわいい!」と言っていただけて、最高の幸せです!
中村直子
日本画部門 本年度審査員 滝沢具幸・宮城 真
(敬称略)
柴田和子
カトレア
54.5×45.5 cm
自宅で育てているカトレアの鉢から根っこがはみ出してきているのが自然で面白いということでお描きになった。生命の中で、普段は見えない根とかに想いを馳せるというのはとても想像力が豊かになること。日本画では美しい花を描くことが多いが、花は一生懸命描けば割と上手く描けるが、本来はそれ以外の空間をどう描くか考えないといけない。その空間こそがその人が持っているイメージや個性が出るところ。それをとても苦労しながら、いい空間を探し出して描いた作品。
宮城 真
友人にいただいたカトレア。それきり数年咲かないままでしたが、ある年の夏 思い切って外の日陰に出してみました。寒くなる前に室内に移してみると、環境に合ったのか大きなつぼみを2つ付けていました。そして芳香を放って見事に咲いたのです。感動をそのままスケッチしました。宮城先生のご指導によって素敵な日本画になり、喜びが幸福になりました。
柴田和子
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