2018年12月7日
第35回 日本陶芸倶楽部アマチュア作品展受賞作品一覧
陶芸部門 本年度審査員 竹内順一・見附正康・和田 的
(敬称略)
谷中耀子
「夢の運び人」
径45.0×25.5 高 48.5cm
こういう自由造形のものは、意味があるようでないような、そういう世界。これは力作で、審査員全員が票を入れた満票の合格。絵柄が自由で、のびのびとしていて、傑作ということで選ばれた。
竹内順一
この度「夢のはこびびと」で最優秀賞をいただき、みなさまに感謝申し上げます。作品の構想は、“夢のはこびびと”である空想のペンギンに、地球の人間たちのささやかな願いを宇宙の果てまで届く光に乗せて届けて欲しいというものでした。今後も“稚気愛すべし”の信念で創作を続けて参ります。ありがとうございました。
谷中耀子
いのうえみえこ
「うねる!」
左 径25.5×21.5 高25.0 cm
中 径20.0 高16.5 cm
右 径23.0×18.0 高25.5 cm
真ん中の色味といい、3点セットの色のバランスが素晴らしい。使う用途もあるが、こういう自由な形を 組み合わせてひとつの作品に主張しようとすることは 実はとても難しいことで、そういう難しい課題を見事に果たした作品。
竹内順一
中央の作品は多面体にし、数ヶ所に赤とトルコブルーの下絵具を、残りの部分には金液と白金液と寒色系上絵具を面毎に分けて用いカラフルに、更に金と白金部分に流水等の模様を彫って輝きの流れを作りました。どの面にどの色を使うか決めることを楽しみました。左と右の二つの「パッチワーク作品」は釉薬だけの「渋い」色彩になりました。こちらは貼付完了間近まで最終形の見当がつかず、それが不安でもあり愉快でもありました。今後も自由な形を(総じて梱包・運搬に苦労しますが)制作して参ります。「自由な形の作品を組み合わせてひとつの作品にした点がよい。」との審査講評が予想外で驚くと共に勉強になりました。
いのうえみえこ
國保有理
「祥瑞 孔雀と獅子」
水指 径19.5 高18.0cm
奥左 皿 径22.0 高4.0 cm
奥右 鉢 径17.0 高7.5 cm
染付がすごく細かくあしらってあり、とても素敵な作品だと思った。染付は描いた時と焼いた後では色が変わり 慣れていないとムラが出やすいと思うが、きれいに均等に描かれている。また皿の一閑人がとても可愛らしく、そこにも惹かれた。
見附正康
祥瑞という古典模様の中で、その型と模様を崩すことなく新しい感覚を取り入れてユニークで楽しい作品を作るのはとても難しい事です。色の調合や絵付時の筆使い、呉須の濃さ等も最近になってやっと自分の思い通りにできるようになりました。何度も壁を乗り越えてここまで来ましたがまだまだ完璧には辿り着けず、この先も修練が必要で、やきものの深さを思い知る日々です。これからも修業の気持ちを持ちながら頑張っていきたいと思います。
國保有理
郷原恵美子
「貼付紫陽花文三足壺」
径20.0 高20.0 cm
すごく丁寧に作られていると思った。自分も技術研修所の時に粘土でこういう風に作ったことがあるが、意外とこの接着部分にヒビが入ったりして割れやすい。それを本当に綺麗に作ってあって、これだけ鮮やかに色付けもされていて、とても素敵だと思った。
見附正康
紫陽花が好きで今年は足付壺に咲かせました。花の形を変え、葉を立体的に付け、タンパン・塩化コバルトで色付けし全体に乳白釉を掛けました。花びらは一部練込のグラデーションを入れ、単色を配置しました。思いと少し違いましたが、先生方の御指導のおかげで良く出来ました。この度、身に余る「谷川徹三賞」をいただきありがたく、今後の励みにいたします。
郷原恵美子
木谷百合子
「色鳥どりの豆皿」
径11.0 高2.0 cm 7枚
鳥がお好きなのでしょうか。そんな気持ちが伝わってくる作品だと感じました。「色鳥どり」というネーミングにも一工夫あり、一層作品を引き立てていますね。普段の生活の中でも、世代を問わず楽しめる器だと思います。
和田 的
黒化粧した豆皿2枚に鳥柄を彫り素焼き後釉彩し、面白く出来上がったのが始まりでした。身近な題材を参考に3枚は白化粧、線彫して下絵の具等で彩色。残り2枚は化粧をせず、うち1枚は絵付けのみでの仕上げです。背景は釉薬を筆で塗ったりスポンジで叩いたり、最後に透明釉を掛けて1枚は還元焔焼成。7枚の鳥豆皿がやっと完成しホッと一息…沢山の色を使っていました。
木谷百合子
中村直子
「猫の入れ子」
大 径26.5×17.0 高11.5 cm
小 径17.5×10.5 高6.0 cm
箸置 8ヶ
猫の特徴を捉え、細部まで作り込まれた非常に好感の持てる作品だと感じました。入れ子になっている器の中に、更に猫型の箸置きが重なり合って収まっている様子は、猫好きであれば堪らない光景ではないでしょうか。例えば食卓で普段は片付けが苦手な子も、パズルのようになっている箸置きを楽しみながらお手伝いができそうですね。
和田 的
ネコの入れ子を作ろうと思い立ちました。大きなネコから順々に、中ネコ、ちびネコ8匹と、焼成後の収縮率を計算しながら、ぴったり収めるのに苦心しました。完成後は大きい器にローストビーフでも盛り込んで…、と想像しながらの楽しい作陶でした。和田先生のご講評をいただいて、これからも自分が愛しいと思うものを、愛情こめて作ってゆけばいいのだと、思いを新たにしています。
中村直子
秦俊司
「雪の森」
大 径23.5 高3.0 cm
小 径12.5 高2.5 6枚
乾山焼をイメージして作っているが、一つ一つ見ると決して乾山の写し物ではない。平成の、自分が乾山になったつもりの、自由な作品。土器皿の系統はこういう自由さが必要だが、それを真っ当に取り組んだのは素晴らしい。
竹内順一
自分が自由に描けそうなものと思い、尾形乾山の作品から白黒モノトーンで単純な木の絵に決めました。雪と道、木の形、大きさ、色はどの皿も少しずつ変化させ、また木が森に見えるように描きました。色の濃淡は、焼成後まで全く分かりませんでしたが、適当な調和と変化が森になったようです。受賞で陶芸の秘めた才能があるのではとも思いましたが、教室へ行くと作陶手順を忘れ相変わらず「先生、次はどうすればいいんですっけ…」が現状であります。
秦俊司
相良多恵子
「Comported T」
陶板 径12.5 厚0.5 cm
モダンなテクスチャーというか無国籍な文様が面白く、色も部分部分に入っていて、作品だけ見るとどこの国の人が作ったのだろうっていう位、すごく素敵だと思った。自宅に飾りたい位 気に入った。
見附正康
去年の暮、渋谷の画材屋のセールで見つけた「どこか懐かしい感じの額」。何を入れようか?なんとなくアール・デコやバウハウスのイメージが思い浮かんだ。その時たまたま目にした雑誌で旧帝国ホテルの暖炉上にライトの壁画を発見。こんな雰囲気のモダンなデザインをあの額に飾れれば素敵だろうな。想いは作陶へ。本来なら作品を飾る脇役の額だけれど、額からイメージが広がることもある。Comport with − ふさわしい。そんな「ふさわしい」を楽しんで作陶するのも有りですね。
相良多恵子
藤井健治
「街の灯」
径31.0×19.0 高29.0 cm
杖をついた紳士が座って目を閉じているのか、まどろんで何かを想い耽っているのか…鑑賞者それぞれが自由に想像できる作品だと思いました。街灯が温もりを感じさせ、この季節にぴったりの作品ではないでしょうか。私自身も季節の移ろいをこの灯に感じたのかもしれません。家において眺めていても、何だか優しくなれるような灯りがとても印象的でした。
和田 的
人生もそろそろ晩年に差しかかり、今までを振り返りながら残りの人生をどう過ごしていくかを一度立ち止まって考えてみたいと思っていました。その思いを大好きな俳優のチャールズ・チャップリンの姿や、彼の代表作である“街の灯”の場面を借りて、物思いに耽っている姿で表現してみました。街路灯を陶芸でどう作るか悩み、またその電球をどうしようと思い秋葉原電気街を探し回ったのが今ではいい思い出です。一番難しかったのがチャップリンの姿を再現することでしたが、なんとか思い通りの作品ができ、ホッとしました。これを大きな励みとして、今後も作陶していきたいと思っています。
藤井健治
日本画部門 本年度審査員 滝沢具幸・宮城 真
(敬称略)
新居敦子
「初秋」
62.5×47.0 cm
物を見る力っていうのか、把握する力が物凄くあり、初秋の草のデリケートな感じまで捉えることができていて、それでいて空間がとても優しくて、とてもいい作品だと思う。
宮城 真
鶏頭の花が好きだ。このモデルも仲間であろうか。穂のような花が伸び、それぞれが気ままに楽しげに遊んでいるかのようだ。描いている時、いつもの自分とは違っていて、ふっと肩の力が抜けたような楽な気持になっていった。心楽しいものも少し感じながら…。草花たちのおしゃべりに、ほんの少し混ざらせてもらえたのか。
新居敦子
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