2011年12月16日
平成23年度 日本陶芸倶楽部アマチュア作品展
昨年から、コートなしでご来場いただけるようにと、
日程を文化の日の近くに早めたアマチュア作品展。
天候にも恵まれ、陶芸部門・日本画部門合せて 234名・257点の力作が並んだ会場は、
熱心に見入る方々で、終始活気に溢れました。
ご来場の皆さまのうち735名の方に
心に留まった、陶芸作品3点、日本画1点をお選びいただきました(人気投票)。
「絵付」「茶陶」「化粧土の加飾」とテーマ別に行った列品の解説、そして「質問の多かったもの」についての説明には、たくさんの方々が熱心に聞き入って下さいました。
合同審査風景 |
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作品審査は2日目の午後行われ、 合同審査を経て各賞が決定しました。 |
平成23年度審査員
陶 芸 部 門 出光昭介・前田正博・近藤髙弘・ 鈴木 徹・栗原直子
日本画部門 滝沢具幸・宮城 真
(敬称略)
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恒例の人気イベント「作陶とお茶を愉しむ」も、
入れ替わり立ち替わり、500名近くの参加者で賑わいました。
作陶会場では、老若男女が、家族揃って・お仲間同士、手びねりまたは電動ロクロでの成形、絵付、小鉢への加飾と、和気あいあい愉しまれました。 |
電動ロクロ成形 |
手びねり成形 |
絵付 |
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茶室で、立礼席で、会員有志による流派を超えたおもてなし。
会員手作りのお茶碗でお抹茶一服。日本の伝統文化「茶」をお愉しみいただきました。
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場所を南国酒家に移し、作品展の締めくくりの講演会・懇親会。
近藤髙弘先生による講演会は「変容の刻」と題し、映像を観ながらの1時間でした。
「変容の刻」要約
中国元代に始まった染付の仕事を、祖父 悠三、 父 濶と、七十年近くやっている家に生まれ、五条の登窯 京焼の中心地で遊び 育ったが、中学・高校・大学と卓球一筋で過ごし、社会人となり、サラリーマン生活をしながらも、日本のトップ選手として卓球に明け暮れ、陶芸の道に入ることはなかった。
が、京都芸大の教授だった伯父の近藤豊が五十歳で自ら命を絶ったことが、やきもの 近藤家の仕事を振り返させられるキッカケとなった。
陶芸の道に入ってからは、近藤家の技術を継承しながらも絵付けのモチーフは自分独自のものを心がけ、初個展は1990年ブラジルのサンパウロで開いた。一ヶ月の滞在中に見た現代アート「サンパウロビエンナーレ展」でモダニズムの洗礼を受け、作家とは何か?を自分に問うた結果、ロクロの仕事を離れた。形は方形、模様も抽象的染付、92~99年 時空シリーズとして発表した。古いものと新しいものが共存する世界的歴史都市 京都に暮らす中から“相反するものを融合させる” 作品が生まれ、1995年スコットランド国立博物館で発表した。「火」「土」の対極にあるもの「水」、生まれた清水は水の聖地、染付も水を表す… 水の表現は、自分にとって必然で、銀滴彩+染付 の箱ものシリーズが生まれた。
2000年以降 器から遠ざかり、用を考えなくなる。海外の美術館では長いこと陶芸は浜田庄司で止まっていたが、この頃から現代陶芸が海外で認知されるようになり、自分の作品にも海外からオファーがくるようになった。
2002年 エジンバラ国立芸術大学では、新しい造形表現を求め、土以外の素材を勉強した。
その中で、ガラスとの出会いが 0℃シリーズへとつながる。ガラスと磁器を繋ぎ合わせてゆき、窯での大きさの限界(h80cm)を超えて大きな作品が出来るようになった。スコットランドの遺跡stone park からのインスピレーション 天と地をつなぐ…、火の中から相反するものを表出させる 銀滴・ミスト、これら作品を国内外で発表する。
近代陶芸をどう乗り越えるか? 伝統的文化 歴史を内包する陶芸に新しい表現を…との思考が大きくなって、土以外の素材での作品を それも広く美術の中で展開させたい…と作品を作り 発表の場を持ってきた。
銀滴彩「セルフポートレート」
陶芸の道に入って、矛盾あり、葛藤有りで二十五年。伯父近藤豊が自死したと同じ五十歳になり、セルフポートレート展として、今までやってきたことの総括をした。染付から銀滴 全ての技法を鋳込みで作った自分の顔の上に焼きつけた。2009年に作り始め、2010年から大阪・東京・NYと順次発表。2011年2月 NYでの個展が終わった後、日本は震災に見舞われた。自分自身がこれから作家としてどうやって行くかを考えてのテーマ「死と再生」が、3月11日以後、世界を巡る会場で、見る側にもオーバーラップして強く印象づけることとなった。
以上、作品として広く世に発表する仕事を表とすると、その裏側での活動について以下のお話しを伺いました。
- ひとつの修業の意味を込めて、野焼のワークショップを続けていること。
- 奈良県の水の聖地 天河大辨財天社に造営した穴窯「天河火間」のこと。
- 13年前に東北の全寮制高校に登窯を築き、毎日使う自分達の飯碗は自分で作ろう と、土掘りから成形、薪割から焼成までのワークショップをしていること。
- 幸いにして震災で無事だったその窯で、被災した人も含め、地元の人達と一緒に器を作り、8月10月と2回 合計2000点の作品を焼き上げ、被災者に配り届けていること。
最後に柳宗悦の著書「工芸の道」を読み返しながら、改めて、近代工芸を乗り越えるには 陶芸の領域にとどまらず、美術という広い国際的視野の中で表現する必要があること。しかし工芸の本質は、地域の人間と自然との関わりの中で生み出される(半農半陶)ものにあること、絶対矛盾の中で自己統一を図っている心境をお話しいただきました。
講演会に続いて理事長の挨拶で懇親会開会。
本年は審査員の先生方に加え、小池頌子先生、 島田文雄先生をゲストに迎え、それぞれの卓を 囲んで会話も弾みました。 |
小池頌子先生
島田文雄先生 |
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いよいよ審査による陶芸部門授賞作品の発表。
各作品に審査員からのコメントをいただきました。 |
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前田正博先生
近藤髙弘先生
鈴木 徹先生 |
引き続き日本画部門。滝沢先生、宮城先生より、優秀賞と人気投票第1位が発表されました。 |
最後に来場者の皆様による人気投票の集計結果発表。
735名の方々がご参加下さいました。
授賞作品発表後は陶芸談議で大いに盛り上がりました。