2011年12月16日
平成23年度 日本陶芸倶楽部アマチュア作品展受賞作品一覧
陶芸部門 本年度審査員 出光昭介・前田正博・近藤髙弘・鈴木 徹・栗原直子
(敬称略)
審査総評
我々プロの世界では人と違うことをやるのが第一の鉄則。 アマチュアは発想の自由さが作品の魅力となる
前田正博
日本陶芸倶楽部の方々の作品は多種多彩。どう選ぶか大変難しかったが、歴史ある倶楽部の、それぞれの方のキャリアを度外視して、ふっと感じる作品を選ばせていただいた。
近藤髙弘
皆さん楽しんで作っていらっしゃる感じがすごく伝わってきて、 僕が忘れていることを改めて思い起こされ、 逆に勉強になりました。
鈴木 徹
長山一夫 「朱と藍と白の食器」
長角皿 縦19.0×横25.0×高5.0cm 3枚
小皿 縦9.0×横10.0×高1.5cm 3枚
醤油差 縦3.5×横4.5×高11.0cm 2ヶ
技術的なことだけでなく、この作品の醸し出す雰囲気が心にとまった。中に入っている文字の感じと、赤と青の柔らかさ、それらの調和がすごくよく、ふっとこちらに伝わるものが一番強かった。 近藤髙弘
近藤髙弘
四方に大きな立ち上がりのある長角皿に挑戦。大きな鉢の石膏の型に、板状に切った赤土を被せ、丁寧に叩き、型に馴染ませます。型の上で型紙をあて長方形に切り、そっと剥がして一丁上がり。今回の狙い目とした美しい朱と藍色は、下絵付けの顔料が、赤土の生地と酸化焼成との出会いによって発色します。英字新聞の切り抜きを悪戯して中央に印刻し、モダンな印象を演出してみました。心配した立ち上がりの勾配も、垂れずにしっかりと維持され、重なり具合と使い勝手も良く、盛り映えのする刺身皿となりました。
長山一夫
和氣洋美 「穴の中の主張」
径31.0×高54.0cm
とりあえずすごい。日を分けて描く時に染付の濃淡を揃えるのはとても大変なこと。形と、もう一つ穴の中に絵付をしているバランスが上手くおさまっている。
近藤髙弘
絵付けを始めてから「絶対に間に合わない」と泣言を言いつつの18日間 108時間だった。少し頭を傾げた、しかし均整のとれた瓢箪の一部を大胆にも切り取り、軸を半分切り落した筆を手掌に握り込み、額のライトで穴中を照らしながら、瓢箪の内側に祥瑞紋様を書き入れた。「穴の中の主張」とは、その程度の意味である。しかし、たまたま穴の形状が、それとなくムンクの「叫び」を連想させるものになったようで、「耳を澄ましたら・・・・と聞こえた」というコメントを来場者からいただいた。混迷深まる2011年だったからだろうか?
和氣洋美
儘田久美子 「江戸のいろはかるた」
読み札・取り札 縦10.0×横7.5×高0.5cm
各47枚
発想の豊かさ、アイディアの面白さを買わせていただいた。絵も面白いし、かるた札の裏表にちゃんと釉が掛かっていてすごく大変だったと思う。
前田正博
他にない作品を作りたいとの思いが陶製の「いろはかるた」になった。両面化粧した厚さ3mmの陶板の取り扱いに細心の気配りをし、出品締切りまでの日を数えながらも、カルタの世界に没頭した。「“て”天堂人を見捨てず」札の番では、3月11日の被災者の事が浮かび、自然に合掌していた。無事に焼上った「かるた」は遊具だけで無く、茶会での席決めの札として、又 ちょっと菓子などを乗せてやきもの本来の「うつわ」としても使おうと、使えるその日を夢見ている。
儘田久美子
内田恒雄 「根来漆器風茶菓子セット」
花入 径14.0×高2.0cm
鉢 径21.0×高6.0cm
皿 径17.0×高2.5cm 2枚
土瓶 縦12.0×横16.0×高19.0cm
湯呑 径8.0×高9.0cm 2ヶ
すごく楽しんでいて、なおかつ高いレベルで作品が出来上がっている。根来塗の雰囲気を出すために艶黒釉を掛けて焼いた上に、赤絵を上からブラシで落としている(上絵付)と聞いて、技能賞はこれしかないと思った。
鈴木 徹
室町時代に栄えた紀州根来寺の根来漆器の黒漆の下地とその上の深みのある朱色に魅せられ、昨年来、それを陶器で表現することを試みてきました。今回の作品は、実用品としての根来漆器を基本としながらも陶器の味を出すことに努め、前回の作品展、チャリティー展に次ぐ出展です。今後とも進化発展させることが出来ればと思っております。また、司馬遼太郎著の「街道をゆく」にも載っている根来寺も近々訪ねてみたいと思います。
内田恒雄
矢野弘典 「灰被壺」
径23.0×高26.0cm
楽しんで作っているのが見て取れる作品。灰も上手く被って、いい雰囲気で、最初に目に留まった。
鈴木 徹
このたびは谷川徹三賞を頂きまして、誠に有り難うございます。今回は参加することに意義があると思っていましたので、受賞は全く想定外のことでした。これからの励みにいたします。当の灰被り壺は清春窯で焼いたものですが、登り窯と赤松の醸し出す玄妙で不可思議な世界に取りつかれそうです。倶楽部に入会してまだ一年弱、陶歴も僅か七年という新米です。この静かな落ちついた雰囲気の中で、ゆったりと気長に作陶を楽しんで参りたいと存じます。
矢野弘典
児玉順子 「桜文茶碗」
左 径10.5×高7.5cm 右 径12.0×高8.5cm
茶陶の中から、特に茶碗で、明るく華やかなのがいいという気持ちでこれを選んだ。
出光昭介
予想もしない素敵な賞をいただき驚きと喜びを感じているところです。この作品は、通勤の途中に見かける世田谷通りの桜並木や砧公園の満開に咲いている桜と花ビラがそよ風に吹かれピンクのジュータンの様に敷き詰められた光景を思い浮かべ描きました。日本陶芸倶楽部の講師、スタッフの方々にはいつも、わがままな希望を聞き入れていただきほんとうに感謝しております。
児玉順子
許斐順子 「照る秋」
径34.0×高10.0cm
アマチュアの域を出た、技術的にもかなり高いレベルの作品。
鈴木 徹
秋たけなわの里山で、山帰来の実が赤く色づき始めました。この情景をまず弁柄で描き、上絵付の金銀赤等で色どりを添え、「照る秋」と致しました。ハート形の葉に棘のある茎、放射状に付く丸い実が面白く、何度かこれをモチーフにしましたが、今回のように大きい鉢の内外に描き込んだのは初めてです。照り映える秋が、思う通りに表現出来ました。
許斐順子
井上智雄 「花」
縦11.0×横36.0×高7.0cm
震災の大変さ、景気の不透明感、いろいろな所で暗い空気がある中で、少しでも明るく、花を…という気持ちで明るい作品を選んだ。
出光昭介
一枚の紙を冬日が暖めつ
今回の作品は「花一束」ですが、一枚の紙にゆだねた花々をロクロでつくりました。日本陶芸倶楽部を訪問し陶芸をさせていただく都度感じている暖かさをとても大切に思っている三十年間でした。この度び初の会長賞受賞で更めて今後もお世話になります。とても皆様の優秀な作品にまじっておぼつかなく感じておりましたのに選んでいただき本当に有難く存じます。
井上智雄
小堺ひとみ
「呉須象嵌噴水-日本橋架橋100年-」
噴水 径18.0×高28.0cm 水盤 径38.0×高8.0cm
鉢に水が張られ、筒の上からは水が流れ落ちている。鉢の青磁と石の日本橋風景の染付が清々しい。
前田正博
2011年は呉須象嵌に夢中になった一年でした。この噴水作品がテーマ通りの「日本橋架橋100年祭」の日に、賞を戴けたことがさらなる喜びでした。100年前の日本橋に登場してくる人や物の動きを半磁土の筒に線彫りで描き込み、呉須を入れては削る作業を何度も繰り返す呉須象嵌手法ですが、表面の土をエアーブラシで飛ばした瞬間に現れる日本橋の世界を、この3カ月一人で楽しみ、さらなる受賞は何とも嬉しい結果となりました。選んでくださった審査の先生方へ心より感謝致します。
小堺ひとみ
松浦清人 「バイク」
縦12.5×横21.5×高22.0cm
やっぱり発想だと思う。色が黒かったりするとだいぶイメージが違うと思うが、白いマット釉でなんか愛らしいというか、自分の好みで物を作っているというところにすごく好感が持てた。
前田正博
期間限定で白マット釉が使用できるとのご説明があり、光沢を控えた、重量感のあるこの釉薬で何か作ってみたいと考え、白いバイクを作ることにしました。最初はバイクのみでしたが、何か物足りなく、ライダーを加えました。2輪車で不安定にならないか、焼成で歪まないか心配でしたが何とか先生方にお手伝い頂きこの作品ができました。バイクに乗ったこともなく、細部に稚拙さがかなりありますが、次も陶彫に挑戦したいと思います。
松浦清人
日本画部門 本年度審査員 滝沢具幸・宮城 真
(敬称略)
審査総評
陶芸の中に「絵付」という作業があるということを平山郁夫先生から言われて以来、この墨絵教室をやっている。素焼に描くのは、墨絵の吸い込み方ととても似ている。また日本画(岩絵)という日本伝統の技法を宮城先生が指導している。みなさんも是非 挑戦して下さい。
滝沢具幸
新居敦子 「赤い実」
縦47.0×横62.5cm
筆先を自由に使って、素直に写生している。筆と墨で描く効果がよくでている。また彩色のバランスもいい。
滝沢具幸
春には 花を楽しませてくれたであろう野バラに近い小ぶりのバラ。秋に 赤い実となり 飛び跳ねるようについている。色づき始めた葉は 微妙な色の変化をみせる。モデル(モチーフ)に「かわいい実だね!良い色の葉!」と 話しかけるような気持ちで描いた。なかなか対象に近づく表現はできないが、描くことによって 観ることによって より知り合えることが嬉しい。
新居敦子
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